症例:頬づえで生じる顎関節症。

顎関節症について。

患者さん情報:20代・女性・会社員。

主訴:口を開けたり歯ごたえのあるものを食べると左顎が痛み、最近は左のこめかみあたりに頭痛がする。(図1)

図1

顎関節症の経緯。

1−2年前から口を開けたときに顎が鳴ったり、左顎に痛みが出ることが時々あった。

1ヶ月前から口を開けたり、鳥の軟骨のような歯ごたえのあるものを食べた時は決まって左顎が痛む。

1週間ほど前から偏頭痛が出るようになり、1〜2日に1回の頻度で左のこめかみがズキズキ痛む。

ネットで顎関節症について調べていたら当院のブログ記事「頭の傾きや片噛みで顎関節症!」で書かれていた症状と似ていたので当院へ来院。

顎関節症の症状。

左顎関節から左側頭部にかけて痛み、その周囲を触っても圧痛や熱感はない。つまり運動時痛しかなく、おそらく顎関節の関節円板や周囲の軟部組織に炎症はない。

口を開けると顎は一旦右にスライドしてから最後の瞬間に大きく左へとスライドする。開口は指二本分でそれ以上開けると左顎に痛みを訴える。

症状の関連事項。

今回ほど痛くはないが、高校生3年の頃に口を開けた時に顎が鳴ったり、痛むことがあった。

歯科医には行かずに放っておいたら痛みは、1ヶ月ほどで痛みは引いたが、それ以来、顎が鳴るようになる。

食べるときは主に右で噛んでおり、顔の骨格を観察しても右の眼窩が小さく骨も変形していた。

歯並びを見ると左手で頬づえをついている可能性を示す歯並びになっていた。本人に確認するこれを認めた。また、考え事をするときなどペンを噛む癖がある。

顎関節症の原因。

この方の顎関節症は頬杖をつきながらペンを咥えていたことが原因です。

この方は職場以外で考え事をするときはいつも頬杖をついてペンを咥えていました。

左手で頬づえをつくと頭の重量が左の顎関節に集中して顎関節の動きを滑らかにし、緩衝材として働らく軟骨「関節円板」が圧迫されます。(図2)

図2※南江堂「ネッター解剖学アトラス」より抜粋。

慢性的に圧迫が関節円板へ加わると、関節円板を養う血流が障害され、軟骨が劣化します。

軟骨が劣化すると軟骨表面の滑らかさが失われ、顎を動かすたびに引っかかるので、左顎から音が鳴るようになります。

その状態で顎を動かし続けていると、摩擦によって関節円板が傷つき、炎症が生じて痛みを発します。

また、頬杖をつくことで顎の土台である首の骨(頚椎)にも負荷がかかることで、上部頚椎(図3)がズレてしまい、首の痛みや頭痛などを引き起こします。

図3

さらにペンを加えた状態で頬づえをつくと、顎関節の関節円板への負担が増え、劣化を加速させます。

ペンを咥えると、中途半端に口が開いたところに頭の重量が顎関節に加わわることで、口を開ける筋肉と口を閉じる筋肉が同時に緊張します。

顎の動きに応じて関節円板は引っ張られて、最適な位置に移動します。関節円板が顎関節内で最適な位置にあるおかげで、顎の動きがスムーズになりますが、顎を開け閉めする筋肉が同時に緊張すると、関節円板は動くことができずに固定されてしまいます。

その固定され、逃げ場を失った関節円板に負担が集中し、顎関節の関節円板が痛みます。

さらに、顎を開ける筋肉よりも顎を閉じる筋肉の方が強いので、結果的に顎が開けずらくなります。

この方は高校生の時も同じような症状になっています。

時期的に大学受験の時だということなので、ずっとペンを咥えながら頬杖をついて受験勉強をしていたことで顎関節症になったのだと思います。

そして、ここ1年ほど前から会社の仕事とは別にデザインの仕事も掛け持つようになったことで、今までよりもさらに頬杖をついてペンを咥えてている時間が増えました。

そのせいで、関節円板が圧迫されて血流が悪くなって劣化し、顎の筋肉全体が緊張して顎が開けづらくなり、頚椎がズレることで首の痛みや頭痛になりました。

顎関節症の施術。

口を開けた時に鳴る顎の音は軟骨の劣化が修復されるまで消えないので、時間がかかります。

しかし開口時の痛みや口の開けづらさは比較的短期間で改善させることは十分可能です。

施術内容:

施術は主に頬杖によってズレた上部頸椎を矯正して正しい位置に戻し、硬く張った顎の筋肉を特殊な手技で緩めることです。

上部頸椎は、顎の開け閉めに応じて動くことで顎を支えて安定させます。それによって顎の開閉がスムーズになります。

しかし、この上部頚椎がズレて動かなくなると顎の動きに合わせて頭を動かすようになり、口開けるときは頭や顎を前に突き出しす(前方頭位」になります。

前方頭位になると首の筋肉への負担が増えて、さらに顎の関節円盤への負担が増えるので顎は開けづらくなり、首の痛みや頭痛を引き起こします。

指導内容:

頬杖とペンを咥えることを止めるように強く言い聞かせました。

寝ながらスマホいじりも前方頭位を助長させ首のズレを誘発させるので止めるように指導しました。

猫背や前方頭位を予防するために「猫背を治し、肩こりを解消する「肩こりの対処法」を指導しました。

症状の経過。

11回の施術で左顎の痛みはなくなり、大口を開けられるようになり、軟骨も食べられるようになりました。

最初の5回の施術は週1回のスパンで行い、残りの6回は月1のメンテナンスを行なった。

現在はだいたい半年に一度、調子が悪くなった時だけ施術を受けている。

院長からのコメント

顎関節症の原因は噛み合わせばかりが注目されますが、頬杖や腕枕など、普段の何気ない動作でも生じます。

歯科医で顎関節症と診断され、歯を削ったりマウスピースを長期間着用したりと色々やってみたけどダメだった顎の痛みが、頬杖をやめるように指導しただけで、数週間で改善したことも多々あります。

どんなに、噛み合わせを合わせても、馬鹿高い矯正器具をつけても頬杖をついたら一発で歯型は変わり、噛み合わせは崩れます。

なかなか良くならない顎の痛みや顎関節症でお悩みの方で、頬杖をついたり寝っ転がって腕枕で頭を支えてテレビを見たりしている人は、まず頬杖をつくのをやめてみてください。

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