症例:息を吐くと肋骨が痛む。

目次

肋骨の痛みについて。

40代の女性が肋骨の痛みを訴えて来院。

呼気や、くしゃみや、歩いた時の振動や右に寝返りを打つ時などの動作で左脇の肋骨が痛む。図1

図1

一週間ほど前から痛み出し、その時は息を吐いた時にじんわり痛む程度だったが、それが3日前にリュックを背負って歩いていたら急に「ズキン」と痛みだす。

あまり痛くて折れているのではないかと思い、整形外科を受診したが、レントゲンでは骨に異常はないと診断され、痛み止めと湿布を処方される。

現在痛みは一昨日に比べたらましになったものの、依然として痛む。

肋骨の痛みの原因。

左の肋骨を軽く圧迫すると痛みを訴えるが、折れている様子はない。

その他、発疹や発赤、焼けるような痛みを発する灼熱痛などもないから帯状疱疹の可能性は、まずない。

骨折や感染症でないとすると、動きが悪くなった肋骨が原因か、または肋骨を動かす筋肉を痛めたことが原因の可能性が高い。

肋骨の動きが悪くなると、動かそうとする筋肉と動かない肋骨との間で呼吸のたびに摩擦が生じ、痛みを発する。

また、肋骨を動かす筋肉を痛めたり、こむら返りのように筋肉が強く緊張すれば、当然肋骨周辺が痛む。

このようなことはクシャミや体を急に捻ったり、ヨガのポーズのように無理に体を捻ったり、腕の力だけで重たいものを持ったりなど、ありふれた動作や姿勢で簡単に生じ、その程度によって痛みが出たり出なかったりする。

この方に肋骨を痛める可能性がある動作や状況を聴いてみたが、どれも思い当たらないようだった。

思いたるきっかけがないので、姿勢を観察すると、体が右に傾き、骨盤を左に突き出した「くの字」だった。(図2)

図2

筋肉の張りを調べると、背骨の左側に着く多裂筋と腹筋の張りが強く、特に左の腹横筋は強く張っていた。(図3)

図3

これは腰痛持ちに多く見られる典型的な姿勢と筋肉の緊張である。

ぎっくり腰になり腰が不安定になると、腹圧を高めて腹筋をコルセットのように緊張させ腰を支える。ぎっくり腰の痛みが引いた後も、この筋緊張はだいたい1−2ヶ月のほど残る事が多い。おそらく、ここ1−2ヶ月の間にギックリ腰を患った可能性が高いと言える。

原因は過去の腰痛。

腹筋や腰回りの筋肉が張ることで肋骨の動きが制限される。特に腹筋は呼気の時に働くため、呼気で痛みを発する。

この方に最近ぎっくり腰になったかどうかを確認すると、3月の中旬(3週間前)にギックリほどではないが、動くたびに腰が痛くて、しばらく大変だったことと慢性的に腰が重いことが、分かった。

さらに肋骨が痛くなるちょっと前に、自転車のカゴから大量の買い物を下ろそうとした時に、左の腰が重くなったが、1-2日で痛みが治まったことを思い出した。

腰の悪い人は重いものを持つ時に腰に力が入りづらいので、腕の力だけで持ち上げようとする。

腕だけで持ち上げようとすると、脇の下周りの肋骨が支点になる。そのせいで筋肉も少なく骨も華奢な肋骨に負担が集中し、筋肉が緊張して肋骨の動きが制限され、痛みが生じる。

つまりこの方の肋骨の痛みは腰痛によって腰や腹筋が緊張したことが原因。

肋骨の痛みの施術

肋骨の痛みに対する施術の内容は以下の通り。

  1. 動きが制限されている左の第9肋骨に動きをつける。(図4)
  2. 腰痛の原因となる歪んだ骨盤やズレた腰椎を矯正する。(図4)
図4

肋骨に動きをつけることで肋骨と周囲の筋肉などの軟部組織の間で生じる摩擦が軽減され、呼吸が楽になる。

骨盤の歪みと第4腰椎と第1腰椎(図4)のズレを矯正することで腰の安定が増し、物を持ち上げる時に腰の力を使って踏ん張れるようになる。そうすることで肋骨の動きを制限する腹横筋や多裂筋への負担が減り、緊張が緩和される。

以上の処置を行い、呼気での痛みや寝返りでの痛み、歩いた時の衝撃による痛みは、ほぼ改善されたが、患部を押したりジャンプすると施術前ほどではないが、痛みを訴える。

一週間後に次回の予約を取り、初回の施術はこれで終了。

一週間後に来院した時は呼気や歩行での痛みはなく、ただ患部を押したりジャンプすると少し痛むと訴えていた。

2回目は、腰痛に関する部位の他、全身の歪みを矯正して終了。肋骨の筋肉を痛めているため、下手に弄るよりは自然に痛みが引くのを待つべきと判断し、施術は終了した。

院長からのコメント。

腰痛の後に肋骨を痛める人は結構多い。そのせいでなかなか原因がつかめず痛みが長引く傾向がある。

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