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読書録:【新訳】フランス革命の省察

目次

保守の前提と革新の前提

自由・平等・博愛といったおめでたい夢幻を掲げ、過去の権威や伝統を根絶やしにして達成されたフランス革命を「保守の父」エドマンド・バーグが痛烈にコキ貶したのがこの「フランス革命の省察」。

その貶しようは、イギリスの首相ピットに「この罵倒は芸術的だ」と言わしめるほどの内容。

この本は、まだ保守という言葉すらないフランス革命当時に書かれたものですが、人名や党名、地名を現代風にアレンジすれば、現代十分通用する普遍性を備えています。

保守も革新もその目的や手段は時代や洋の東西によって変化していますが、それぞれの前提となる思想はバーグの時代からずっと変わっていません。

この前提を知ると、ウィンストン・チャーチルが「20歳の時にリベラルでないなら、情熱が足りない。四〇歳のときに保守主義でないなら、思慮がたりない。」と言ったのか?また、保守はどうしてこうも魅力がない年寄りじみたものなのか?そしてリベラルはどうして人を魅了するが、こうも「無能」なのか?その理由をよく理解できるようになるだろう。

バーグはこの本の中で保守とリベラルの前提を次のように述べている。

保守の前提。

フランスの革命派諸氏は、自分たちが叡智の光に満ちていると風潮する。わが国の父祖たちは、そんなうぬぼれとは無縁だった。人間は愚かであり、とかく過ちを犯しやすいーこれこそ彼らの行動の前提となった発想である。

自分たちの掲げたお題目に酔い、権威も伝統もぶち壊してどんちゃん騒ぎをしている様を聞いてバーグが抱いた感情は、おそらく「蒼天航路」という漫画の中で慢心極まった袁紹を見て曹操孟徳が言ったセリフと同じだったのではないかと思う。

生来の己を忘れきった破廉恥な威厳。
天の寛容を真似る陶然とした笑み
醜悪だ!
心に闇をもたぬ者が慢心極めればいいここまで醜くなるものか!


人間は間違いを犯し、愚かである。そのような闇を持っていると自覚するからこそ謙虚に振る舞い、過去の伝統を重んじ、変えるべきものと捨て去るものの選別を慎重に行う。

特に国家の根幹に関わることは石橋を叩きすぎるほど慎重に行うべきである。十分熟慮を重ね、決して勢いだけで変えるべきではない。

それは端から見ればノロく、臆病にしか見えないし、場合によったらただの「尻拭い」に徹することになるから当然、魅力がない。

しかし、政治の最大の成果は魅力的であることよりも、安定し確実であることである。

リベラルの四つの前提。

  1. 人間は、社会のあり方を望ましくする方法を適切に考案する理性、およびこれを確実に実現して行く能力を持っている。
  2. 社会を望ましくする方法論が二つ以上存在する場合、人間は個人的な利害関係や感情にとらわれることなく、どちらが良いかを冷静に判断できる。
  3. 右の二つの前提は社会全体で成立している。言い換えれば、自らのあり方を望ましくしようとすることにかけて、社会は首尾一貫した単一の意思を持っているとみなして構わない。
  4. 社会のあり方を変えることに伴うコストや副作用は、変化のスピードを上げたからといって顕著に増大することはない。

この四つの前提を読んでも分かる通り、実に聞こえはいいが、中身は空疎でただの絵空事だということがわかる。

人間の行動のほとんどが場当たり的で感情的であって、理性など全く当てにならない代物だ。それはトランプの当選をみても明らか。

理想へ至る道のスタート地点は常に現在地である現実からスタートすべきであり、おめでたい美辞麗句が並んだ夢物語から始めるべきではない。

夢物語からスタートすれば必然的にスタートよりも悲惨な現実という名のゴールに至る。

だからリベラルは余程の幸運に恵まれないかぎり、失敗が決定づけられてしまう。たとえ上手くいったとしても、時間が経ち運の効果が切れれば、いずれ瓦解するのは必定。

しかし、失敗が決定づけられた絵空事から破滅へ至る過程は逆に魅力的でもある。

今年は、世界情勢が劇的に変化する年になると言われています。

行き詰まりの資本主義やグローバリゼーションと原理主義のイデオロギー対立、衰退の一途を辿る世界経済などなど、このようなあらゆる前提が崩れ混迷を極めた現代だからこそ、目新しい思想にしがみつくのではなく、人間の暗部をしっかり見据えて政治のあり方を解く「フランス革命の省察」を熟読することをお勧めします。

ぜひ、バーグの慧眼と芸術的な罵詈雑言を味わって頂きたい。

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藤田 和広

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藤田 和広

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