症例:プッシュアップ動作で生じる右肩の痛み。

目次

右肩の痛みについて。

プッシュアップ動作や右腕を水平に上へ持ち上げる(上腕外転)動作の時に右肩の前面に痛みを訴える30代前半、男性会社員が来院。(図1)

図1

1週間前に近所のジムでマシンを使ってベンチプレスをやろうとバーを持ち上げようとしたら、肩が抜けた様に力が入らず、持ち上げられなかった。

もう一度持ち上げようとしたら右肩前面に痛みが走り、持ち上げることが出来なかった。

痛めた時は何もしなくても痛みがあったが、現在は動かさなければ痛みはない。

痛みは右の肩前面に張りと動作で生じる痛みがあり、主にプッシュアップ動作の様な腕で重いものを押す動作や、腕を水平に90度以上挙げる(外転運動)で痛む。

検査

患部を触ると烏口腕筋(図2)が強く張り、押すと鈍い痛みを訴える。

図2

こちらの手をプッシュアップの要領で右手で押してもらうと、あまり抵抗できずに右肩に痛みを訴える。左は肩は全く問題ない。

患部の右烏口腕筋の筋力を検査すると痛みを訴えるものの、筋力低下はほとんどない。

プッシュアップで腕を伸ばす上腕三頭筋(図3)の筋力を検査するが、患部の痛みとわずかに筋力の低下がみられる程度だった。

図3

次に肩と腕を前に突き出す筋肉「前鋸筋」(図4)の筋力検査を行うと、明らかに左よりも弱かった。

図4

右肩の痛みの原因。

前鋸筋の様に背骨や胸郭や頭蓋など体幹から肩甲骨や鎖骨に着き、これらの骨を支える筋肉のことを近位固定筋と言います。

一方、烏口腕筋や上腕三頭筋の様に肩甲骨や鎖骨から上腕や前腕に着く筋肉を遠位固定筋と言います。

近位固定筋の筋力が低下すると肩甲骨や鎖骨の支えが悪くなり不安定になるので、肩甲骨や鎖骨から上腕骨に着く遠位固定筋への負担が増えます。

つまり患者さんの右肩の痛みは、近位固定筋の前鋸筋の筋力低下が原因です。

前鋸筋の筋力低下。

右前鋸筋の筋力低下により、プッシュアップの瞬間に遠位固定筋の右烏口腕筋へ負荷が一気に加わり、烏口腕筋を痛めました。

この前鋸筋を筋トレして強化すれば、烏口腕筋への負担が減り、烏口腕筋の痛みも消えるはずと思われますが、恐らく右の前鋸筋はなんの問題もなく、鍛えても無駄です。

根本的な原因は猫背。

筋力はその筋肉が付着している関節や跨いでいる関節の状態に影響で弱くなったり強くなったりします。

そのため前鋸筋が付着する背骨と肋骨で構成される「胸郭」の関節に歪みやズレがあると筋力は弱くなります。

そして患者さんの胸郭を観察すると猫背で肩を窄ませた悪い姿勢をしているので、これでは右前鋸筋は筋力を発揮し辛くなります。

この右前鋸筋の筋力低下をもたらす原因は猫背などの「悪い姿勢」です。

つまり姿勢の影響で前鋸筋の筋力が低下し、プッシュアップ動作で烏口腕筋に負荷が集中した結果、筋肉を痛めました。

右肩の痛みの施術。

原因である右の前鋸筋が付着する胸郭の歪みを改善するために、背骨や肋骨のズレを矯正しました。

そして遠位固定筋が付着する右肩甲骨や鎖骨のズレを改善するために右の胸鎖関節や肩鎖関節を矯正しました。

施術後、こちらの手をプッシュアップの要領で右手で押してもらうと、まだ右の烏口腕筋に少し痛みが残るものの、筋力は問題なく、しっかり押し返せました。

右前鋸筋の筋力検査を行うと、肩甲骨もしっかり安定し、筋力も十分でした。

右肩外転運動も痛みはなく、しっかり90度以上あげることが出来ました。

今回はこれで終了。1週間経っても右肩に痛みがある様なら予約する様に伝え施術を終了しました。

後日LINEで「ベンチプレスをしても痛くありません。ありがとうございました。」とメッセージがあり、これにて右肩の施術は終了。

院長からのコメント。

筋肉に問題がなくても、周囲の関節の状況が筋力に影響します。

この場合、関節のズレや歪みを改善せずに、筋トレしたりストレッチしたりと筋肉にアプローチをしても、効果はありません。

練習やトレーニングで筋肉を痛めることが多い方は、一度、カイロプラクティックで骨格を調整してから練習すると、筋肉を痛めるリスクを回避できると思います。

ぜひ一度、ご相談ください。

ふじたカイロプラクティックは2016年6月開業の整体院。
院長は臨床経験16年。延5万人以上の実績!
マッサージや整骨院、病院では治りにくい腰痛や坐骨神経痛の他
股関節痛や膝関節痛など、辛い症状でお悩みの方は下記のコメント欄かFacebookやLineでお気軽に問い合わせください。

ご予約は、お電話の他、FacebookやLineでも受け付けています。
FacebookやLineから予約いただいた場合はお得な割引もございます。
ご予約の際はぜひご利用ください。
予約についてはこちら→予約について

 

藤田 和広

Share
Published by
藤田 和広

Recent Posts

神経学の基礎:手首の動きで変わる運動制御

手首の屈曲と伸展の運動制御 手…

6か月 ago

アポロで弔いのギムレット。

阪東橋駅から県道21号線に向か…

1年 ago

「うつ病」はクソだが役に立つ。

全くありがたくない「うつ病」 …

1年 ago

炎症とうつ病:新たな視点からの理解と治療への期待

うつ病は、全世界で数多くの人々…

1年 ago