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主訴:開口時に生じる左顎の痛み。図1
患者さん:30代女性の会社員
4日前にボールペンを左の顎で咥えながら、頬づえを突き、2時間ほどパソコン作業をしていたら、翌朝から左の顎が痛み出し、口がほとんど開けられなくなった。
もともと口を開けると左の顎がゴリゴリ鳴る事はあったが、痛くて口が開けられなくなったのは今回が初めて。
顎関節症についてネットで調べていたら当院の頬杖で顎関節症になるというブログ記事を見つけ来院。
痛めた当初は何もしなくても左顎が痛み、口も開けられなかったが、来院時には口を開けると痛むだけで、開口すると指一本分程度なら開けられるようになっていた。
直接の原因はボールペンを噛みながら頬づえをついていたことです。
根本原因は弯曲のない胸椎と頚椎(ストレートネック)と頭を前に突き出した前方頭位姿勢(図2)などの悪い姿勢です。
ボールペンを咥えながら頬杖をついていたことで、左側の噛む筋肉(図)が強く張ります。
これらの筋肉が緊張すると口を開ける筋肉の邪魔して口が開けづらくなります。
また口が中途半端に開いた状態で噛んでいたことで、開口運動と閉口運動に関わる外側翼突筋(図4)という筋肉が緊張します。
外側翼突筋には上頭と下頭の2つの頭を持ち、上頭は閉口で下頭は開口で働きます。
これらは開口と閉口の際に下顎の動きに合わせて軟骨性の緩衝材である「関節円板」の位置を調節しています。
開口時は外側翼突筋下頭が関節円板を前から引っ張り下顎の位置に合わせ、閉口時は外側翼突筋の上頭が関節円板を後ろへと押しやり、下顎の位置に合わせます。
こうして外側翼突筋は口の開け閉めに合わせて関節円板を調節しています。
しかしペンを咥えて頬杖をつく事で外側翼突筋上頭と下頭の両頭が緊張して関節円板の動きが止まり、下顎の動きに合わなくなります。
そのせいで関節円板が下顎と擦れ、ゴリゴリ音がしたり、開けづらくなったり、痛みが生じたりします。
この方は、もともと外側翼突筋が緊張していたせいで開口時にゴリゴリ音が鳴っていたのでしょう。
そして今回、ボールペンを咥えながら頬杖をついた事で、トドメを刺したのだと思われます。
この外側翼突筋の緊張の原因は根本原因である「悪い姿勢」です。
この方の姿勢を観察すると猫背の逆で弯曲のない平坦な背骨で、首も弯曲がないストレートネックでした。
さらに両側の僧帽筋が緊張して肩甲骨を持ち上げ怒り肩になり、そのせいで頭を前に突き出した「前方頭位」姿勢でした。
怒り肩と前方頭位によって首は肩と頭の間で圧迫されていました。
試しに怒り肩と前方頭位姿勢を打ち消すように、頭を後ろに引き、怒り肩気味の肩甲骨を下げた状態で口を開けると開けやすくなり、指1.5本分ほど開けられるようになりました。
このように頭の位置や首の状態は噛み合わせや顎の開け閉めに影響します。
頭の位置や姿勢の変化による噛み合わせの不具合を抑えるために中枢神経は、頸椎の関節や首や頭部の筋肉の状態に応じて咀嚼筋の緊張をコントロールし、噛み合わせを最適な状態に調整しています。
姿勢が悪くなると筋肉のバランスが狂い顎の開閉障害や食い縛り、噛み合わせの問題などが生じます。
この方のように頭が前に出て怒り肩になると、舌の根元にある舌骨が筋肉に引っ張られて後下方にズレます。図5
舌骨がズレると舌骨から顎に着く筋肉を介して下顎がズレるので、口が開けづらくなります。
さらに前方頭位姿勢は首だけで頭を支えきれないので顎の筋肉を緊張させて顎を固定して頭を支えるようになります。
その結果、筋肉の張りや開口時の痛みなどが生じます。
施術は悪い姿勢のせいでズレた頸椎の他、背骨や骨盤の歪みを矯正して体の歪みを取り、頭の位置と首の弯曲を正常な状態にしました。
再発防止のために頬杖、片噛み、うつ伏せでのスマホイジリや腕枕など、顎関節に悪影響を与える悪い癖を止めるように指導し、姿勢改善のための背中と小胸筋のストレッチを指導しました。
施術は患者さんの海外転勤により2回で終了。
2回目終了時には、口を開けると開口時のゴリゴリという音もだいぶ小さくなり、指もギリギリ3本分開けられるようになりました
完治ではないにしろ、当初の目標である開口時の顎の痛みと開口障害は改善されました。
顎関節は姿勢の影響を受けるので、単に歯を削ったり、マウスピースを入れて噛み合わせを合わしても、根本的な解決にはなりません。
また歯は敏感な感覚器です。そのため歯を削ると感覚器も失われてしまいます。
これにより口腔内の違和感によるストレスから歯ぎしりや食いしばりが生じることが多々あります。
噛み合わせや食い縛り、顎の開け閉めでの痛みなどでお悩みの方は、歯を削る前に一度、カイロプラクティックの施術で姿勢改善から取り組んでみたらいかがでしょうか?
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