ハイヒールによる膝の痛み。

目次

ヒールと膝関節痛の関係。

最近、若い頃に履いていたハイヒールが原因で膝を痛めた、30代後半から40代の女性が多く来院されます。

20代はずっとヒールを履いて過ごしていたが、30代で膝が痛くなってヒールをやめて踵がぺったんこの靴を履くようになる。

その後、膝の痛みはおさまるが、30代後半から40代あたりで急に膝や股関節が痛み出す。

この手の症状はほぼほぼ、ヒールを履いて変な歩き方をしていたことが原因なのですが、患者さんとしては、もう随分履いてないので「そんなことはない」と思っている。

実はヒールによる膝の痛みの多くは後になってから出る事が多いので、当事者はあまり気がつかない事が多い。

このブログでは、ヒールを履くとなぜ膝が痛むのか?その原因とメカニズムと対処法を簡単ではに説明します。

ヒールを履く人に多い特徴的な歩き方。

ヒールを履いていると爪先立ちのような状態になるため、脹脛の筋肉の腓腹筋が強く張ります。

図1

腓腹筋が強く張ると、つま先を上に持ち上げる「背屈」という動作が制限されるので、しゃがんだり、足の裏をベタに付けて立てなくなります。

すると歩行中に足の裏をベタにつけて片足で体を支える「立脚相」で体のバランスを崩しやすくなり、立脚相が短くなります。

立脚相が短くなると逆に足が地面から離れている「遊脚相」も相対的に短くなり、歩幅は狭くなります。

歩幅が狭くなると移動距離が短くなり、さらに疲労も増え、運動効率全体が悪くなります。

この運動効率の悪さを補うためにヒールを履く人は腓腹筋とアキレス腱の張力(張り伸びる力、伸ばそうとする力に対する反作用)をバネのように利用し、爪先で地面を蹴るようにして歩くことで、体を激しく上下させて弾むよう歩きます。

このような弾むように歩く歩行のことを「弾み歩行」といい、こうすることで、足を無理に広げなくても最小限の労力で早く歩けるようになります。

膝を痛める弾み歩行。

弾み歩行は過度に体が上下するので、垂直方向の衝撃が倍増します。

垂直方向のその衝撃は水平方向の関節面の膝を直撃します。

さらに腓腹筋は足関節を底屈させるだけでなく、足をついた状態で緊張すると膝関節を伸展させます。

膝関節が伸展した状態で上から体重などが加わると、負荷が膝を直撃します。

上下運動の衝撃は進展した膝関節を直撃し、その結果、膝関節を痛めます。

そのまま放っておいた人の末路。

膝関節は丈夫で、かつクッションもしっかりしている関節なので、痛めてもすぐに痛みはでませんが、この状況が長期化することで損傷が蓄積され、早ければ30代前半で痛みが出ます。

痛みが出ると膝を曲げて力を逃がしますが、膝を曲げることで前傾姿勢が強くなります。

前傾姿勢を補正するためにお尻を突き出し、腰を反らして歩くようになり、今度は反り腰による腰痛を発症させます。

腰痛で腰が反れなくなると腰を屈め、さらに股関節を軽度屈曲させて歩くようになります。

こうして前傾姿勢に拍車がかかります。

そして40代になると股関節と膝が痛くなり、痛みから逃げるように膝を曲げてガニ股にし、腰を曲げ、股関節を曲げて歩いているうちに50代で膝や股関節が変形します。

あとは転がり落ちるように姿勢の「お婆さん化」が進み、後期高齢者で手術。

歩くことも少なくなり、ある日、家で転倒して大腿骨頭を骨折しようものならQOLがますます低下、体を動かすこともほとんどなくなり、寝たきり街道まっしぐら。

それでもハイヒールを履きたい人は最低これをやれ!

こんなことにならないように、今のうちにやるべきことは、重心を後ろに保ち大股で歩く「正しい歩き方」を身につけるまではヒールを履かないことです。

正しい歩き方はこちらをよく読んで参考にしてください。→正しい歩き方

ヒールで歩く際はなるべく急激な衝撃(インパクトピーク)を抑えるために踵から着地する「ヒールストライク」ではなく、足の親指の付け根(母指球)で着地してから踵を地面に着ける「フォアフットストライク」で歩くように癖付けること。

そして同時に強く張った腓腹筋をストレッチボードでしっかり緩める。

ストレッチボードに関する記事はこちら→腰痛と脹脛の張りの意外な関係。

最低この2つが出来てからヒールを履いて颯爽と歩いてください。

正直、ヒールは正しい歩き方の講習を受けた人でないと購入できないよう義務付けるべきだと思います。

それだけ体に負担が大きく、下手に履くと危険な靴なので、現在20代でハイヒールを履いている人は覚悟して履きましょう。

すでに膝が痛い人は当院へ!

藤田 和広

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藤田 和広

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