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猿から人間へと進化する上で重要な要因が二足歩行で、二足歩行を可能にしたのが腰の骨(腰椎)です。
人間や二足歩行を訓練された猿の腰椎には腰の反り「前彎」という彎曲があります。
腰椎の前彎は二足歩行には絶対必要な要素で、これのおかげで骨盤の上に胴体を安定さて歩くことができます。
一方、腰椎が曲がると彎曲が前彎とは逆に後彎します。
腰椎が後彎すると前屈みになって歩行時の揺れが大きくなるため、疲れやすくバランスが悪くなって倒れやすくなります。
このような歩き方は、猿や姿勢が悪い人に多く見られます。
猿も二足歩行を訓練すれば前彎が現れて人間ぽく歩けますが、残念ながらがどんなに猿が二足歩行に習熟しても、人間と猿とでは腰椎の数が違うため、決して人間のようには歩けません。
人間には腰椎が5個ありますが、猿には3つか、多くて4つしかありません。
数にしてたった1-2つの違いだが、これが大きな違いを生みます。
腰椎の数が増えると立ったときに腰椎が増えた分だけ撓み、つまり彎曲が大きくなる。
彎曲が大きくなれば腰を反らすことが出来、立ったときに重心を後ろに保て、腰の上に上半身を乗せて安定させることができる。
また、腰椎の前彎は歩行時に大きく撓むことで免震装置として働きます。
その撓みが歩行時に生じる体の揺れを抑え、転倒を防ぐことができる。
このようにたかが腰椎1〜2個の違いですが、二足歩行においては大きな違いを生みます。
今回は二足歩行を可能にする解剖学的な特徴を腰椎だけに絞りましたが、当然腰だけではなく下記および下の図のような様々な要因が絡んでいます。図1
しかし、やはり腰椎の数が猿より多いことは、二足歩行を獲得し、その後に知性を備えた人類へと進化する上で大きなアドバンテージとなります。
このように腰椎が人間より少ない猿はどんなに努力しても人間並みに歩けませんが、人間がサルの歩行並みに退化するのは意外に簡単です。
5個ある腰椎のうち1-2個動きが悪くなれば、機能的に腰椎が3つしかない猿と変わりません。
腰椎が3つしか機能しなくなると、腰が反れなくなって腰椎の前彎が減少し、そのうち腰が曲がって後彎になるのも時間の問題。
こうなったら腰椎だけでなく姿勢まで猿とほとんど変わらなくなります。
そして厄介なことに腰椎の猿化を助長させる状況は我々の生活環境に根差したありふれた状況です。
もっとも一般的なのが腰を丸めた状態での長時間の座位。
一般的にオフィスワークと言われる状況です。
腰を曲げた状態で長く座っていると、1センチ㎠程度の腰椎の関節に負荷がかかり、腰椎の関節が圧迫されて動きが悪くなる。
特に胸椎と関節する腰椎の1番や仙骨と関節する腰椎の5番など、関節面の構造が変わる部位にそのような負荷が集中しやすく動きが悪くなる。
その状況で慢性的に負荷が加わると関節同士がロックされ完全に動かなくなる。
上下に位置する腰椎の動きがなくなると、しだいにその間の腰椎の動きも悪くなり、次第に腰が反れなくなって前彎減少。
とうとう腰椎が曲がって後彎すれば、腰が伸ばせないから前傾姿勢になり、股関節と膝を曲げてトボトボ歩くようになります。
こうして猿に逆戻り。
猿は人間のように歩けないが、人間は環境と姿勢で簡単に先祖返りできます。
そしてある領域を超え、腰椎の変形が進めばもと元に戻れなくなり、猿まで行かなくても猿人ぐらいにはなるでしょう。
そうなりたくなければ、職場内を時々歩き回って、人間らしさを取り戻そう。
人間の体は二足歩行するように進化したのであって、オフィスで1日「ドテッ」と座るようにできていません。
歩くのが面倒だからと座り心地がいい快適な椅子を求めても無駄です。
そもそも完璧な椅子などないし、座り心地の良さが=健康、腰痛予防とは限りません。
腰も姿勢も頭も猿になりたくなけば、四の五言わずに歩きなさい!
老後を養老院で意味もなく歩き回る羽目になるか、寝たきりになりたくなかったら、今から歩きましょう。