症例:階段を上ると痛む股関節

目次

股関節痛について。

50代の主婦が左股関節の痛みを訴え来院。

股関節痛の経緯。

1ヶ月前から買い物で重たいものを持って長く歩いたりすると左股関節の鼠径部付近が痛み出す。(図1)

図1

2週間前に団地の階段を登ろうと左足を階段に乗せて踏み込んだ瞬間、左股関節に激痛が走り、足が着けなくなる。

左足を着いて階段を上れないので、手摺りにつかまり横向きに一段一段右脚をつき、なんとか3階の自宅まで階段を上がった。

翌日、整形外科を受診してレントゲンを撮るが骨に異常はないと言われ、湿布や痛み止めを処方されるが何も変わらず、意味がないので行くのをやめる。

先週、ぎっくり腰になった時に世話になった整体へ行き、左太腿前面を強く揉まれ、骨盤を強く押される施術を受けた。

施術が終わり整体院を出てバス停に向かって歩いている最中に左股関節に激痛が走り、歩けなくなった。

家まで歩けそうになかったので、携帯で娘を呼び出し、車で家まで送ってもらった。

家に着き、そのまま横になるが寝返りを打とうと左足に力を入れると左股関節に痛みが走る。

その日は痛くて寝れなかった。

3日間、家で安静にしていたら、左足を引きずりながらなんとか歩けるようになった。

本日、当院に通っている娘さんに連れられ、本人が来院。

股関節痛に関連する症状。

左の膝関節痛

2年前、階段を下っていた時に左膝が痛くなった。

整形外科を受診しレントゲンを撮ると「左の半月板が薄くなっているが他に異常はない。」と言われ、左太腿の筋肉を鍛えるリハビリを1ヶ月半ほどやっていたら痛みが消え、階段も降りられるようになった。

ぎっくり腰。

1年前、床に溢れた醤油を拭こうと腰を屈めたら背中が裂けるような痛みが走り、動けなくなる。

安静のため2日間ほぼ寝たきり状態。

3日目から歩けるようになり、1週間ぐらいで腰の痛みは引いた。

今は痛みはないが、なんとなく腰がスッキリせず重怠い。

姿勢の観察。

姿勢はやや右に傾いた前傾姿勢で、腰が反り、お尻が後ろ突き出た「反り腰出っ尻」姿勢。

骨盤は反時計回り(左回旋)に捻れて左に振られて、さらに前傾していた。

原因は若い頃に履いていたヒール。

この患者さんの姿勢は前傾した反り腰出っ尻姿勢。

そして過去に膝関節痛とギックリ腰を患ってます。

だいたい上記のような姿勢をしていて過去に膝関節痛や腰痛を患い、現在は股関節痛を訴えている中年後期の女性は、若い頃から比較的最近まで踵の高いヒールを履き続けていたが、40過ぎたあたりから膝を痛めて履くのをやめた人が多い。

本人に上記の内容を確認すると案の定パターン通りでした。

ヒールを履くと姿勢が前傾になり、腰椎が柔軟であれば腰を反らせてお尻を後ろに突き出す「反り腰出っ尻姿勢」にして前傾した体を起こします。

このような姿勢で歩くと太腿前面の筋肉「大腿四頭筋」が緊張します。(図2)

図2

大腿四頭筋は「キック」のような動作をする筋肉で、股関節を屈曲させて膝を伸展させます。

そのため四頭筋が緊張すると骨盤を前傾、膝関節を過伸展させ、膝関節の緩衝材である半月板を圧迫して痛みが生じます。

ヒールを履き続けるとだいたいこの流れで膝関節痛になります。

この方も大方この流れで左膝関節痛になり、本人は整形外科のリハビリのお陰で直ったと思っているようですが、それは違います。

骨盤を反時計回りに捻って左膝に負担がかからないように負荷を逃しているだけで、治ったわけではありません。

こうする事で左膝への負担は減りますが、さらに体が前傾して腰への負担が増えて腰痛になります。

案の定、患者さんは膝関節痛から1年後、屈んだ瞬間にぎっくり腰になりました。

腰痛になると腰に負担がかからないようにするため骨盤は左へ振り、一方、体は右に傾かせます。

こうすることで腰背部の負担は減りますが今度は腰椎から股関節に着く「大腰筋」や骨盤(腸骨)から股関節につく「腸骨筋」が緊張します。(図3)

図3

これらの筋肉は腰や股関節を屈曲させる筋肉です。

そのため緊張すれば腰や骨盤や股関節を反らせなくなり、前屈みで歩幅が狭い年寄りじみた歩き方になります。

そんな歩き方をしていれば大腰筋や腸骨筋の緊張は増すばかりで、その緊張が限界に達する頃になると歩くたびに鼠径部辺りが痛むようになり、そのうち立ってるだけで痛くなって足が着けなくなります。

この患者さんも諸悪の根源である前傾姿勢を直そうとせず、ケツを突き出したり、捻ったり、左右に振ったりと、場当たり的に負荷を逃してきた結果、パターン通りに股関節痛になりました。

股関節痛の施術

幸いこの患者さんの股関節痛は、骨や関節の変形ではなく、股関節周りの筋肉の問題なので、今のうちからしっかり施術と予防に取り組めば改善の余地は十分あります。

当院の施術では、まず直接の原因である大腰筋や腸骨筋の緊張を緩め、次いで骨盤の歪みや股関節や膝の捻れや腰椎のズレを徒手で矯正しました。

同時に予防のために姿勢と歩行の指導と予防法の指導を徹底的に行いました。

その結果、週2回の施術を3回、計6回の施術で左股関節痛はほぼ改善し、階段の上がり下りをしても、重い買い物袋を持って長い距離歩いても、左の鼠径部に痛みが出ることはなかったと言います。

その後は予防法をしっかりやることを条件に施術の間隔を2週間に1回に開け、1ヶ月様子をみました。

特に悪化の兆しがないようなので、間隔を1ヶ月1回に開け、今もメンテと姿勢のチェックのために施術を行っています。

院長からのコメント。

ハイヒールは特殊な靴なのでスニーカーやサンダルのように履くと確実に前傾姿勢になり、この患者さんのように中年以降にその高いツケを払わされることになります。

たとえヒールを履くのをやめても、一度体に染み付いた前傾姿勢は根強く残り、膝関節痛、腰痛、股関節痛などを引き起こします。

もしこの患者さんが前傾姿勢を直さずにいたらどうなっていたか?

恐らく痛む左股関節へ負荷をかけないように体を右に傾けることで負荷が減り、一時的に股関節痛は軽減または緩解します。

患者さんは「自然に良くなった」と勘違いするでしょうが残念ながらかなり短いスパンで確実に再発します。

そして痛みが再発すると今度は膝や股関節を曲げることで左股関節の負荷を逃しますが、代わりに腰への負担が増えるので腰痛になります。

こうして一時的に支払いを回避しても、闇金の督促のようにしつこく痛みが襲います。

この時になると腰椎が硬くなり反らせなくなっているので、逆に腰を曲げ、骨盤を前に突き出して腰にかかる負荷を逃します。

こうして気がつくと前傾姿勢で膝・腰・股関節が曲がり年寄り姿勢になっています。

もう得意そうにハイヒールを履いていた頃の自信と若々しさは見る影もなく消し飛んでいることでしょう。

そんな歩き方をしているうちに腰椎か膝関節か股関節のどれかが変形して痛みが再発。

そうなると何をやっても痛みの改善がみられないので、恐らく50代後半から60代前半で手術を勧められるでしょう。

手術をすれば骨の変形は改善されらでしょうが、姿勢や歩き方が以前のままなので、同じ力が骨に加わります。

すると骨は力に応じて変形するので、股関節痛が再発します。

再び関節が変形し、とうとう打つ手がなくなると、かなり早い段階で寝たきりになるでしょう。

このようにヒールはオシャレと引き換えに、あなたの健康寿命が奪われます。

つまりヒールは老後に督促状が届く借金のようなものです。

それでもなおヒールを履きたいのであれば、姿勢と歩き方を常に気をつけ、サンダルやスニーカーのように毎日履かずに履く場面を選んで利用してください。


ふじたカイロプラクティックは2016年6月開業の整体院。

院長は臨床経験18年。延5万人以上の実績!

マッサージや整骨院、病院では治りにくい腰痛や坐骨神経痛の他

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藤田 和広

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藤田 和広

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