Categories: エッセイ

読書「次の東京オリンピックが来てしまう前に」

2018年12月30日で放送を終了したラジオ「菊池成孔の粋な夜電波」 番組が放送されていた頃は殆ど聴いていなかったが、YouTubeに違法にアップされた過去の放送を見つけ、久々に聴いたらハマってしまった。 私の場合はラジオ番組としてではなく、ほとんど環境音として聴いている。 彼のロジックとメタファーを操りリスナーに語りかける彼の前口上やトークは高性能の遮光カーテンのように火の光を遮り、一瞬にして私を深夜の歓楽街にある鄙びたジャズバーへと誘う。 気だるい夜の時間が何とも心地いい。だがトークの内容は殆ど頭に入って来ない。 その菊池成孔が最近本を出版した。タイトルは「次の東京オリンピックが来てしまう前に」。 この本は、東京五輪と書かれたバイアグラのおかげで、萎え切った日本が怒張し青筋立てていた2017年4月から、病気をもらって萎えて中折れして続行不能になった2020年7月まで間、WEBマガジンに連載されていたコラムを加筆修正を加えてまとめたものだ。 私は、鎌倉にある一本釣り(1尾ずつ型に入れて焼き上げるたい焼きのこと)のたい焼き屋で、鯛が焼き上がるのを待っている時にちょうどその事を知り、早速Amazonでポチッた。 著者は「そもそもオリンピックは博打である」と宣言した上で、オリンピックの意味を以下のように綴っている。
オリンピックは既に、発展途上国を先進国の仲間に入れる力も、いわんや「経済効果」すら期待できないイベントになっている。私はオリンピックに有意義さがあるとすれば、期待するだけしてコケる、という経験が何かを奮い立たせる効果、にしかないと思っている。勝利を!その前に壮大な期待外れと痛みを!(Vサイン)「ロンドンオリンピックと現在の英国の元気」より。
これを読んで私は大笑いした。結局、東京オリンピックが来てしまう前に中国から「コロナ」を感染され、開催国である日本のみならずオリンピックに参加するはずであった全ての国が大コケした。予想を斜め上いく大コケぶりだった。 そして五輪がコケた後の展開について著者は「あとがき」で以下のように綴っている。

筆者は、現行の「リベラル」が嫌いだ。「意識の高い正義」という、途轍もない普遍性を含む意味に肥大しているからである。

——以下省略——

現行のリベラル、特に「ネトウヨ」に倣って「ネトリベ」とも言うべきゾーンの住人の正義感たるや、本当に、腹の底から恐ろしい。恐ろしいとしか言えない。
インターネット、特にSNSは民に万能感を与え、退行させる装置だが、最も恐ろしい正義は、幼稚な正義だからだ。

(バイデン誰に顔が似ているか(顔が)〜あとがきのさらにあとがき〜)

最後に著者はSNSとスマホによって「ネトリベ」が量産され、民主独裁によるファシスト化が日本で進むことに危機感を抱き、悲壮感を漂わせながらフェードアウトする様に本書を締めくくった。
不安や不満を抱えた民衆は聖書に出てくる悪霊が乗り移った豚のように分かりやすい正義を掲げるカリスマの元へと殺到し、崖から落ちて溺れ死ぬ。
著者はネトリベたちからの被害を避け、未だにガラケーを使い、SNSから身を隠している。
彼は深夜のロイヤルホストからネトリベ達がこぞって崖を目指して真っ逆さまに落ちていく様を腹を抱えて笑いながら眺めるのだろう。

この本には東京五輪とその周辺の出来事の他、深夜のファミレス事情やジャズや音楽のこと、映画のことなど著者の数寄が縦横無尽に綴られている。本自体結構厚みがあるが、読みやすいから深夜のファミレスで読めば夜明けまでには読み終わるだろう。終電を逃した時の暇つぶしにいいだろう。(今はコロナだから無理か。)
藤田 和広

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藤田 和広

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