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40代最後の日を「まいきゃっと」で猫と泊まる:「かしわくん」との特別な時間

今年は色々とメモリアルイヤーで、まず先月の16日は治療院の開業7周年を迎え、そして今月15日は私の50歳の誕生日を迎えました。どちらも、ただ日々に追い立てられているうちに年を取ってしまいました。

そこで40代最後の日に何か記念を残そうと、前の日(6月13日)は午前中に仕事を終えると、電車に乗って真鶴で降り、「猫と過ごせる宿」として人気の宿「まいきゃっと」へ行ってきました。

「まいきゃっと」は、湯河原にある素泊まり宿泊施設で、普通に素泊まりもできますが、「トライアル」というサービスを申し込むと別途料金で猫と一晩過ごして猫を飼う体験もできます。

宿に着くとまず、猫のトイレの扱い方、粗相をした時の糞尿の始末の仕方と消毒消臭の手順、猫のケアの仕方や猫へのタブー事項などの簡単な講習を受け、次に併設された猫カフェというよりは猫ホステスの待機場に案内され、そこで今晩一緒に過ごす猫嬢を選ぶ。自分が指名したのはマンチカンの「かしわ」くん、6歳の雄猫です。

部屋に戻り待っていると、スタッフさんがトイレ道具の入ったゲージと猫のキャリーを持って入室。指名した「かしわ」くんはキャリーの中で「誰だお前」という目で自分を見ていた。
部屋に放すと私を遠巻きに眺めながら部屋の中を歩き回り、匂いを嗅いでいた。一通り匂いを嗅ぐとテレビ棚の上に鎮座し部屋の様子を窺っていた。自分が近寄って触ろうとすると「シャッー」とは言わないが、スルリと避けて逃げる。そのくせ放置していると知らぬ間に背後から近寄り、背中や足の匂いを嗅いでいる。

1時間ほど着かず離れずの時間が過ぎ、仲良しアイテムのチュールを冷蔵庫から取り出して与えると、テレビ台から駆け寄り、テーブルの上に乗って「はやくよこせ」とせかす。封を開けて皿に移す間もなく直舐めをしようとする「かしわ」くんを制止しながらチュールを半分皿にさらに持って与え、残りはばれないように冷蔵庫にしまった。あっという間にすべて舐め尽くし、また定位置に戻りしきりに毛づくろいを始める。

しばらく放っておいたら、いつの間にかテレビ台から降りてテーブル下の座布団の上で丸くなって寝ていた。ここは猫が宿の主人みたいなものだから、まだ10時前と早いが寝ることにした。

寝ていると何となく鼻息のような音で目が覚め、寝返りを打つと枕の横にまん丸の顔があった。私が顔を撫でると、その手をつかんで頬をスリスリする。鼻からおでこにかけて撫でてやると目を細める。同時に顎から喉にかけてを撫でてやると鼻を鳴らす。そのまますっかりリラックスして溶けていく。こんなかわいい瞬間をずっと眺めていたいと思える至福の時間。

十分、至福の時間を堪能させてもらったので、明日も早いからそろそろ寝ようと撫でるのを止めると「かしわ」くんは自分の手をつかみ顔を押し付ける。「しょうがないなー」と思いながらも再び鼻と顎を撫でる。10分ほどしてすっかり寝息を立てたのを確認してから撫でるのを止めて「かしわ」くんが掴んでいる手を外そうとすると再び、しっかり爪を立てて手をつかみ、今度は甘噛みしてくる。仕方なく、また撫でる。「かわいい」から「しょうがないな」、「またか」、「めんどくさいな」「いいかげんにしろよ」「いつまでやってんだよ」と気持ちがどんどん冷めてい

き、気が付くと二時間以上過ぎていたので、最後は強制終了。猫を座布団の上に移動させて寝た。

空が白みかけた頃、何かの気配を感じて目が覚めるとテレビ棚の上に「かしわ」くんが座り、こちらを凝視していた。自分が手を伸ばして触れようとすると、指に鼻を近づけ恐る恐る匂いを嗅ぎ、興味なさげに顔をそむけた。あんな親密だった昨夜の出来事がまるでなかったかのように態度がそっけなく、近づいて触ろうとする手を躱して逃げる。残りのチュールをあげて機嫌を取ろうとしたが、最後まで冷たい対応は変わらなかった。

出発準備を始めると、それを感じたのかお利口な「かしわ」くんは自らキャリーの中に入った。キャリーを持ち、ゲージを廊下の外に出して退室。「かしわ」くんをスタッフさんに返す前にキャリーの格子に指を入れて鼻に触ると、指を手で掴んで顔にこすりつけ、指を抜こうとすると甘噛みてきた。別れ際に愛らしさやしおらしさを見せて延長させようとする熟練ホステスのような対応だ。名残惜しいが猫と宿を後にした。結局「かしわ」くんは粗相もなく、うんちもせず、全く手がかからないお利口な猫だった。この日は40代最後の日。「まいきゃっと」を後にした自分は49年の垢落としのために滝行体験に向かった。

続く・・・

藤田 和広

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藤田 和広

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