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炎症とうつ病:新たな視点からの理解と治療への期待

うつ病は、全世界で数多くの人々が苦しむ精神疾患の一つであり、その原因と治療法は多岐にわたります。その原因は、ストレス、遺伝、脳内の化学物質の不均衡など、多くの要素がうつ病の発症に寄与していると考えられており、現在、抗うつ薬や心理療法が主な治療法として用いられています。
ずっと心の病気と考えられていたうつ病ですが、近年、うつ病は、けがや病気の際に免疫反応として生じる「炎症」が原因と主張する新しい理論が発表され、それを証明する証拠が次々と上がっています。

炎症とは、体が感染症や怪我に対抗するための免疫反応で、その時に発赤・発熱・腫脹・痛みと言った厄介な症状が生じます。けがや感染が生じると体中に散らばっている「マクロファージ」という免疫細胞が最寄りの場所から感染した個所に移動して細菌を取り込み、分解します。

細菌と対峙する際、マクロファージは増援を求めたり、ほかの免疫細胞に助けを求めたりする場合に「サイトカイン」というたんぱく質を狼煙のように分泌します。サイトカインは、免疫細胞が感染症や怪我に対する反応を調整するために分泌する物質で、同時に炎症反応を引き起こします。しかし、サイトカインが過剰に分泌されると、熱感、倦怠感、筋肉痛や関節痛などの他に、うつ病や、不安、睡眠障害や集中力低下など、精神的な症状も引き起こすことがあります。

炎症によって放出されたサイトカインは「血管脳関門」という脳を保護し、脳内環境を安定化させ、必要な物質の選択的な通過を可能にするバリアを通過することができます。また、サイトカインを血液脳関門が検知すると、その情報を脳内の免疫細胞として、脳を保護する役割を果たしている「ミクログリア」へと伝えます。こうして体の炎症がサイトカインを介して脳へと伝わり、脳のミクログリアが過剰に活性化されて、神経細胞を攻撃します。

サイトカインが引き起こす神経炎症は、脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、影響する神経伝達物質によって以下のような症状が生じる可能性があります。

  1.  セロトニン: この神経伝達物質は、気分、食欲、睡眠、記憶、学習など、さまざまな脳の機能を調節します。セロトニンのレベルが低下すると、うつ病の症状が現れることがあります。
  2. ドーパミン: この神経伝達物質は、報酬と快楽を関連付ける役割を果たします。ドーパミンのレベルが低下すると、うつ病の症状である無感動や喜びを感じられない状態(無快感)が現れることがあります。
  3. ノルエピネフリン: この神経伝達物質は、注意や反応性を高める役割を果たします。ノルエピネフリンのレベルが低下すると、集中力の低下や疲労感といったうつ病の症状が現れることがあります。

このように精神的な病気とされていた「うつ病」も必ずしも精神だけの問題ではなく、風邪などと同じ身体的な問題で生じる可能性があります。そうなれば「うつ病」も風邪と同じくカジュアルな病気として認識されるようになり、市販薬でもっと簡単に改善できるようになるかもしれない。

うつ病の治療法の新たな可能性として、サイトカインの分泌を抑制する薬物や、ミクログリアの活性化を抑制する薬物が開発されることを期待したい。

参考文献

「サイトカインがブルースを歌う:炎症とうつ病の発症メカニズム」

「うつ」は炎症で起きる

藤田 和広

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藤田 和広

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