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「うつ病」はクソだが役に立つ。

全くありがたくない「うつ病」

うつ病は全世界の成人の約5%が経験し、自殺の主要な原因とされている。

自殺は15~29歳の死因の第4位で、毎年70万人以上が自殺により亡くなっている。また、うつ病は経済的な負担も大きく、米国だけでも2018年のうつ病による経済的損失は2360億ドルに上る。これは2010年と比較して35%以上増加している。
うつ病の患者は短命で慢性疾患を患っている率が高く、就業率は低い。さらに子供が少ない傾向があり、うつ病の親を持つ子供は正常な発育から遅れがちになると言われている。このようにうつ病は生存においても生殖においても、社会的にも経済的にも物質的にも優位性は見られず、不利でしかない。そんな不利でしかないうつ病を発症させるリスクとなる44の遺伝子が最近の研究で特定された。

特定されたうつ病の遺伝子

その研究によると、130,664件の主要なうつ病(MDDケース)と330,470件のうつ病でない人々を対象に遺伝子の特定の位置に違いがあるかを調査した。その結果、うつ病を患っている人々には、うつ病のリスクと統計的に有意な関連性がある44の遺伝子が特定された。

遺伝子の特定の位置に違いがあると遺伝子がコードするタンパク質の形状や機能に影響を与える。その中で主にOLFM4、NEGR1、RBFOX1、LRFN5などの遺伝子は神経発達、シナプス機能、細胞間接着、脳内での遺伝子発現調節などに働くタンパク質を合成し、うつ病を発症させる可能性が結果的に高くなる。この事実により、うつ病の発症が遺伝的要因と環境要因の相互作用により決定されることが裏付けられたといえる。

うつ遺伝子が淘汰されずに残るワケ。

ここで不思議なのは、何のメリットもないはずの遺伝子が淘汰される事もなく現在も残っている事だ。進化の歴史の中で生存戦略上の利益となる遺伝子は残されるが、そうでなければ淘汰される。うつ病は生存においてどのような利益をもたらすのか?その事について「感染症仮説」が進化の観点から説明している。

うつ病の感染症仮説

感染症仮説によると、うつ病は感染症と闘うために必要な状態である。例えば気力の低下や食欲不振などのうつ病の典型的な症状は感染症と戦うために体のエネルギーを温存するように働き、他者との接触を避けようとする傾向は感染拡大の防止に働く。このようにうつ病の症状は病気ではなく感染症に対する免疫反応であると感染症仮説は述べている。つまりうつ病は心の病気ではなく免疫反応といえる。実際に、うつ病が免疫反応である炎症によって引き起こされるということが最近の研究で明らかになっている。

免疫反応としてのうつ病

先述の研究によると、感染や損傷が発生すると近くにいる免疫細胞の「マクロファージ」が現場に駆けつけ、細菌と戦う。その時に免疫反応として「炎症」が生じ、同時に免疫細胞に対して現場の状況や増援の要請などを伝える物質「サイトカイン」が分泌される。このサイトカインは初期の免疫反応を調整する働きがあり、その結果、炎症が強化される。

炎症がうつ病を引き起こす。

炎症は熱、腫れ、怠さや痛みの他に、食欲不振などの身体的、認知的、行動的な変化を引き起こす。これらは鬱病の症状とよく似た疾患行動(sickness behavior)である。このように炎症という免疫反応によってうつ病の症状が引き起こされる。
また、炎症はサイトカインを介して脳の特に報酬系に関わる機能に影響を与える。この報酬系とは喜びや満足感を感じる能力に関与し、うつ病の主要な症状である無感動(何をしても喜びを感じられない状態)が引き起こされる。つまり、うつ病の症状は感染症による「炎症」が引き起こす免疫反応であり、感染症に立ち向かうための「必要悪」として「うつ病」の遺伝子は受け継がれている。

心を病む前に身体の不調を整える。

うつ病は免疫反応として捉えると、症状は心の問題である一方で、原因は身体の問題と考えられる。それゆえに感染症を防ぎ、炎症を抑えることでうつ病の発症を防ぐことが可能だが、体調を崩せば、誰でもうつ病になり得る事を意味する。

メンタルの強さは体の強さに依存し、人の心も体の状態によって左右される。当院でも歪んだ背骨を矯正し、身体が快適な状態になることでうつ病が改善された患者さんは多くいる。何をしても心が晴れない場合は、まずはカイロプラクティックで体の不調を治すことをお勧めします。

参考資料:

1. “Genome-wide association analyses identify 44 risk variants and refine the genetic architecture of major depression”
2. “The evolutionary significance of depression in Pathogen Host Defense (PATHOS-D)”
3. “Inflammation and depression: a causal or coincidental link to the pathophysiology?”

藤田 和広

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藤田 和広

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