最近読んだ本について。

目次

人類の進化について書かれた本。

最近は人間の進化に関する本を中心に読んでいます。

私が主に扱う腰痛・肩こりと言った人間特有の症状を人間の体にとって歴史とも言える「進化」から読み解こうと思い、7月から進化に関する本を何冊か読み込んでいます。

その中でも特に集中して読んでいるのが早川書房から出てる「人体600万年史 上下巻」と、どうぶつ社から出ている「進化の傷あと」の二冊です。

これらは猿から人間に至る進化と、医学に進化論的な考え方を適応して病気の原因を解明する「進化医学」について書かれた本です。

進化医学

進化医学をざっくり簡単に説明すると、肥満や腰痛、静脈瘤、心臓血管障害、睡眠時無呼吸症候群など、人間特有の病気や構造的・機能的欠陥を進化からたどり、その原因を探る医学です。

この二冊とも扱っている内容は同じですが基本概念が異なります。

「人体600万年史」では森を追われた猿がサバンナに降り立ち二足歩行を始めたという、世間一般で受け入れられている「サバンナ説」を採用し、「進化の傷あと」では人類は大湿地帯や現在の紅海のように地殻変動によって陸に閉ざされた海のような水辺にいた猿(水棲類人猿)が進化したという「アクア説」を採用している。

サバンナ説

「サバンナ説」を簡単に説明すると、森を追われた木から降りた猿がサバンナに降り立ち、長い時間かけて二足歩行を獲得し、道具を使い、狩りを始め、人類進化の階段を徐々に登り、約190万年前に晴れてホモエレクトスになったという説。

アクア説

一方「アクア説」とは

人間は、サバンナではなくマングローブが生茂る大湿地帯や沼沢地、グレートブリテン島のような木々で覆われた陸地であるが、一年の半分以上が完全に水中に没しているような、陸とも海ともつかぬ場所に生息していた水棲類人猿だった。

そのような場所に生息していた我々の祖先はボルネオのマングローブが生茂る湿地帯に生息する天狗ザルのようにマングローブから降りて移動する時は水中を二足歩行で移動していた。

水中であれば重力があまりかからず、さらに浮力によって楽に二足歩行ができる。

そのような水辺は現在の紅海のように地殻変動などで陸地に囲まれた海だった場所だと考えられている。

その水辺が長い年月を経て徐々に水が干上がり、塩気が多くなったため我々の祖先は住めなくなってしまった。

仕方なく別の土地を目指して歩き出したのだが、その時にはもう四つ足ではなく、二本足に適応していた。

今更四つ足で歩けないから仕方なく陸地をトボトボと二足歩行で歩いた。

というのが「アクア説(水棲類人猿説)」の大雑把な流れです。

「サバンナ説に対する疑問」

「アクア説」はかなり突飛な説に思えるが、とはいえ主流派とされるサバンナ説も矛盾が多く、あやふやな点もかなり多い。

サバンナ説が言うとおり、森を追われた猿がサバンナで生きていくとするなら、果たして四つ足よりも移動速度が遅く、エネルギー効率も悪い二足歩行で移動するとは思えない。

サバンナ説は周囲を見渡すために立ち上がったというが、周囲を見渡すために立ち上がったとしても、危険を察知して二足歩行で逃げるとは思えない。

間違いなく敵を察知したら四つ足で一目散に逃げるはずである。

両手で食べ物を抱えて運ぶために二足歩行になったというが、敵やライバルから餌を奪われないように運ぶなら、両手に餌を抱えてヨタヨタ歩いている余裕などないはずだ、せいぜい片手で抱えて三本足でダッシュで運ぶはずだ。

そして極め付けがサバンナを二足歩行で移動している種が人間以外にいないということ。

施術をしながらいつも思うことだが、腰痛で腰が曲がり、ヨタヨタ歩く患者さんの姿は気の毒なほど二足歩行の猿によく似ている。

その姿を見ながら「こんな状態でサバンナという過酷な地を餌を求めて歩き回り、敵から走って逃げる事など出来たのだろうか?」と疑問に思っていた。

その疑問に対するヒントとしてアクア説は大いに興味深い。

私にはどちらの説が正しいのか決める権利もそれだけの知識もないから分からぬが、何はともあれ、どちらも人間の体がどうしてこうもポンコツで、不合理にできているのかを知る上でとても参考になる本だった。

「600万年史」では猿と人の体の違いや、さらに猿を二足歩行で歩かせた時の筋肉への負荷や消費カロリーなどの実験データが詳細に書かれていた。

その知識を腰痛の患者さんに当てはめて観察すると、腰痛になって前傾姿勢になるだけでどれだけ歩行の運動効率とエネルギー効率が悪くなるのかがよく分かり、診断や施術の参考になった。

「進化の傷あと」では元々水棲生活に適応した人間が陸生になったことで生じる体の構造的欠陥とそのメカニズムについて詳しく書かれていていた。

おかげでどうして病気になるのか?そしてどうすればいいのか?もよく分かった。

どちらも意見は違えど、とても参考になる良い本だった。

今後も「進化医学」に関する小ネタをブログや動画でアップしていきたい。

動画「最近読んだ本について」

最近読んだ本について動画で語っています。

酷くかみかみですみません。

藤田 和広

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藤田 和広

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