『直立二足歩行の人類史――人間を生き残らせた出来損ないの足』

本書のメインテーマである「直立二足歩行」は教科書に掲載されていた「進化の模式図」の通り、猿のナックルウォークから猿人から直立猿人へと進化し、ついにホモサピエンスが直立二足歩行を獲得したと広く知られているが、これには根拠がないとしています。

霊長類から分岐したホモ・サピエンスとアウストラロピテクスやパラントロプス、ホモ・エレクトスなどの人類と共通の祖先を持つ「ホミニン」は、猿のナックルウォークから進化したのではなく、サバンナに降り立つ前の樹上生活の段階で既に二足歩行であったと主張しています。このような仮説を「樹上仮説(Arboreal Hypothesis)」として知られています。

樹上生活では、四足歩行よりも前肢を使って手を自由に使える二足歩行の方が優れた利点があり、樹上でのバランスの取り方や枝への掴まり方を容易にするため、ホミニンの祖先は徐々に二足歩行を発展させていった。

約一千五百万~一千万年前に乾燥が進んで、広大な森林地帯から小さな森の点在するサバンナになった。森林での生活で二足歩行に適応してしまったホミニンはやむなく、サバンナをおぼつかない足取りで移動し、ナックルウォークで移動したのがチンパンジーなどへと進化しました。

本書は直立二足歩行に関する新しい知見を得られるだけでなく、カイロプラクターとして著者の「足と足首の専門家」としての洞察、観察眼はとても参考になる内容でした。

著者は本書の中でさまざまなホミニンの化石を紹介し、それぞれの年代、生活環境、体の構造を詳しく解説しています。つまりホミニンたちの生活環境、歩行様式、下肢の構造と目の前の患者さんの歩行や下肢の構造を観察し比較することで、患者さんがどのホミニンに近づきつつあるのか予想できます。そうすればその歩行様式によって、足がどのように壊れていくのかを予想でき、さらに未然に防ぐこともできます。それだけの内容が3000円以下の価格で手に入るコスパ最強の一冊。

また本書では著者は、人類の出来損ないの直立二足歩行が、四足動物よりもあらゆる意味で不利であるにも関わらず生き延びた理由として、共感や利他行動に注目した面白い仮説を紹介しています。

成人に達したホミニンの化石が見つかり、その化石には骨折が治癒した形跡がありました。二足歩行のホミニンが足を骨折すればそれはその個体は飢えて死ぬか、食われて死ぬかのどちらかですが、その個体は生き残ることができました。つまりその個体は傷ついた仲間を安全な場所に移動させ、食事を分け与えてくれた「誰か」の助けがあったから生き延びることができました。利他の行動は鈍く、転んだだけで致命的な怪我に発展しかねない二足歩行と出来損ないの足ゆえに発達したものなのかもしれません。身内や同胞に対しては利他的な種族が他者に対して排他的で極めて残虐なのは「人類あるある」です。ホモサピエンス以外のホミニンはそんな利他的な人類によって滅ぼされ、絶滅させられたとする説もあります。弱さゆえに利他的でもあるが、その反面、弱さゆえに排他的でもある。

総じて、『直立二足歩行の人類史』は、人類の進化と直立二足歩行の関係について包括的かつ興味深い情報を提供してくれる一冊です。著者の研究と洞察に基づいた内容は、新たな視点や理解をもたらすだけでなく、カイロプラクティックの臨床にも役立てる、おすすめの一冊でした。

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