読書:職業としての小説家。

村上春樹の小説が好きかと言われると、時々無性にジャンクフードが食べたくなる様に時々無性に読みたくなるが、一通りまとめて読むと今度見るのも嫌になって捨ててしまう。

それを中3の頃から繰り返し、ダンスダンスダンスなどはかれこれ12回ほど買っては捨ててを繰り返し読んでいる。

なんで読んだり捨てたりを繰り返すのか?というと、村上春樹の小説は風景描写や会話のやり取りや心象風景の描写がとても上手くVRの様な箱庭的世界観がとても癖になる。がしかし、とても良くできたVRだけあってやっぱり触覚と嗅覚を刺激する何かが足りない。

ここでいう触覚や嗅覚はあくまでも脳内変換された嗅覚であり触覚です。例えばドストエフスキーの「罪と罰」なんか読むと、路地裏のゲロや食いカスがごちゃ混ぜになった泥濘んだ泥道が放つ鼻をつく泥の臭いを感じることができますし、またラスコーリニコフの穴の空いた靴から染み込む脂っぽい血の感覚をつま先に感じることができます。

だからあまり読むとやたら疲れて暫く読みたくなくなるが、こちらは読む気が失せてもなんとなく取っておいてある。多分、この世界観が私に取ってのホームグラウンドなんだろう。

しかし村上春樹の小説には良くも悪くも品がよく、匂いと手触りがない。だから安心して読めて、たまに読むとものすごく新鮮に感じるが、ある程度読むと見るのも嫌になるくらい飽きてしまう。

多分自分のいる世界じゃないという強烈な拒否反応が生じるんだと思います。とは言え、村上春樹の小説から臭気を感じたら、おそらく読まなくなるんでしょうね。

なんだかんだ読んだり捨てたりしながら売り上げに貢献し、結構長く読んでいるから基本的には好きなんだと思う。

そしてまた今回、久々に村上春樹の本を読んでみたくなって、小説ではなくエッセイ集というべきか「職業としての小説家」を読んだ。

職業としての小説家 (新潮文庫)

この本には、30年以上の長きにわたって小説家として情熱を持ち続け、身体や精神の衰えを可能な限り防ぎ、そして日々成長するために、村上春樹が取り組んでいることが詳しく書かれている。

彼は出版社から頼まれて小説を書かないスタイルを貫き、自分のパフォーマンスを最大限発揮するために生活スタイルを朝方に変え、体の衰えによって生じる創作意欲や思考の衰えを可能な限り防ぐために日々走り続けています。

長く一線で最高のパフォーマンスを発揮し続ける作家だからよっぽど才能があるのかと思いきや、意外にもと才能やモチベーションといったものに頼らず、フィジカルな努力を積み重ねる「泥臭い人」だということを初めて知った。

とは言え、やりたくもない努力をストイックに続けているのではなく、自分の「好き」と「気持ちい」を中心に据え、そして最高のパフォーマンスを維持するという目的にあわせて、自分の性分にあった努力を習慣化し継続してます。

「いつまでもあると思うな親と金」というように、自分の「やる気」や「才能」などいつまでもあるか分からない。

「やる気」など、ちょっと具合が悪くなったり、機嫌が悪くなっただけで浮き沈みするし、自分が思っている「才能」など単なる幸運と大差がない。そんな当てにならないものに寄りかからず、常に最高のパフォーマンスを発揮できる様に自分も取り組んでいきたい。

この本で書かれている彼のセオリーはとても個人的な内容ですが、彼が目的としていることと考え方は、あらゆる業種にも応用可能だと思います。

長きにわたってハイパフォーマーであり続けたいと願う人はぜひ一読ください。

今のところ私が毎日取り組んでいるのは、9年前から症例をノートにつけていることぐらいですね。これのおかげで、直感に頼ることなく施術ができる様になりました。

直感的に施術をすると答えがひらめき、その状況を理解することは出来ても、それが正しい答えであることを論理的に証明することができない。それでは本当に理解したことにはならない。

確かに直感は必要だが、再現性が基本的に運とコンディショニング次第なので当てにならない。不運が続き、ことが上手くいかなくなると都合の悪い結果から目をそらし、すぐ都合のいい解決策探しを始める。だからいつまで経っても何も学ばない。

自分もずっとそうでしたし、セミナー巡礼して顔を合わせれば「なにがしテクニックはダメだ」とかそんな話ばっかりしている薄っぺらい人を散々見てきたので、9年前に一例でもいいから症例を書く様にしました。

これで全てが解決するわけではありませんが、少なくとも自分の頭で考え、自分の裁量で施術を行うという自由がある。当然、自由には必ず責任という厄介なものが付いて回りますが・・・。

治療で飯食っている人は、どんなくだらない症例でもいいから始めることをお勧めします。

あとは、コーヒーを飲み続けていることですかね?前はこれにジャンクフードを食べることが含まれていたんですが、年のせいか最近全然受け付けなくなりました。あんなに情熱を持って食べていたのに、人は変わるもんです。

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