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腸内細菌の驚異的な世界
私たちの体内には約100兆個もの腸内細菌が存在し、これらは私たちの健康に大きな影響を及ぼしています。腸内細菌、または腸内フローラと呼ばれるこれらの微生物群は、私たちの食事から栄養を取得し、私たちが利用できる物質を生成します。ヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取が免疫力の向上や睡眠の質の改善につながるのは、まさに腸内細菌のおかげと言えます。
腸内細菌と自己免疫疾患
腸内細菌群が炎症性免疫反応を調節し、特にTh17細胞のような炎症性T細胞の活動を抑制したり、活発にすることで、炎症性と抗炎症性の免疫応答のバランスに大きな影響を与えていることが、あるマウスを使った実験で示されました。これは、腸内細菌を調節することが自己免疫疾患治療の新たな可能性として考えられています。
プレバイオティクス、プロバイオティクス、ポストバイオティクス
腸内細菌の研究は、プレバイオティクス、プロバイオティクス、そして最新の概念であるポストバイオティクスという3つの視点から進められています。プレバイオティクスは腸内細菌のエサとなる食物成分で、これを摂取することで腸内細菌の活動を活性化させます。一方、プロバイオティクスは健康に良い影響を与える生きた菌のことを指し、これを摂取することで腸内フローラのバランスを整えます。
ポストバイオティクスと短鎖脂肪酸
最新の研究では、「ポストバイオティクス」という新たな概念が注目されています。ポストバイオティクスとは、腸内細菌が食物成分を材料に生み出す健康に有用な代謝産物のことを指します。その代表的なものが「短鎖脂肪酸」で、これは腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖をエサにして生み出す成分で、人間の体に有益な作用をもたらします。
ポストバイオティクスと自己免疫疾患
短鎖脂肪酸は、腸内環境の改善や全身の健康に寄与します。具体的には、腸内を弱酸性に保ち有害な菌の発育を抑制したり、腸の活動エネルギーになりぜん動運動を促したり、腸管のバリア機能を強化します。さらに、免疫の働きを整える、血糖値を一定に保つホルモンのインスリンの分泌を調整する、肥満を予防する、生活習慣病の予防と改善をするなどの効果があり、何よりも炎症性免疫細胞の活動を抑制し、自己免疫疾患やアレルギーなの予防にも効果があります。