腰痛

「座り心地の良い椅子」の罠:腰痛予防の真実と歩くことの価値

1. 椅子選びの迷信:腰痛防止に「完璧な椅子」は存在しない

患者さんから「腰痛にならない、いい椅子はありますか?」と言った質問をよく受けますが、結論から言えば「そんなものはありません」。

問題は椅子云々ではなく、長時間座る事が腰に悪いからです。確かに座り心地がいい椅子を買えば腰への負担を効率よく分散してくれるでしょうが、ゼロにしてくれるわけではありませんし、負担は体に蓄積され、いずれ限界を迎え、腰痛という形で破綻します。

2. 座り続ける生活の代償:腰痛の悪化を招く快適さの罠

ゲーミングチェアのような座り心地のいい椅子は腰への負担を分散させる設計になっていますが、腰に蓄積された負担まで解消してくれる訳ではありません。普通の椅子から座り心地のいい椅子に変えても、それは支払いと取り立てが厳しいローンから返済しやすいローンに借り換える事と同じです。

3. 腰痛とローン返済:快適な椅子が招く「負のスパイラル」

返済しやすいローンは支払い猶予や月々の支払いを低く抑えられ、日々の支払いが安くなる代わりに返済期間が延び、いつまでたっても元本が返せず、結局は利子を余計払わされる仕組みになっています。座り心地のいい椅子とはまさにこれと同じで、腰にかかる負担を分散し腰痛の発症を先送りにするだけでなく、浪費家ほど月々の支払いが安くなるとそれに甘えて借金をし、結果的に月々の支払額が増えるように、腰痛になる人に限って快適さに甘えて長時間座り続け、知らぬまに腰への負担が蓄積されます。

「座り心地がいい」というのは単に腰への負担を先送りするだけです。それに甘えて座り続けた結局、腰への負担は増え続け、残念ながらその支払いは、そう遠くない未来に何の警告もなく「ぎっくり腰」や「慢性腰痛」、「坐骨神経痛」という形で払わされ、健康寿命が差し押さえられます。

つまり座り心地のいい椅子は貧乏人を借金漬けにする「リボ払い」と同じです。これなら普通の椅子に座ってた方が早い段階で腰痛になることで逆に腰痛悪化を防げたかもしれません。

そして残念な事にローンと違い、人間の体はもっとシビアです。借用書を誰かに押し付けることも、誰からも借りる事も出来ませんし、自己破産も出来ない。救済処置が一切ない完全自己責任だということです。

4. 文明の進化と腰痛:長時間座る生活が招く健康への影響

そもそも人類が長時間座る生活になったのは人類600万年の歴史の中でここ数100年のこと。我々のご先祖様は爪も牙もなく体毛もなく、圧倒的に足が遅い二足歩行の猿でした。人類は常に肉食動物に怯えて隠れながら食べ物を求めて二本足でヨタヨタ歩き回る生活を何百万年も続けていました。その結果、人間の体は歩くことに最適化されて現在の体になりました。
一方、座りっぱなしの生活は、近代になって生活環境やテクノロジーの進化といった「文明の進化」が急速に進んだここ数十年の出来事です。文明の進化は数十年単位で進みますが、肉体的な進化は何万年もかかります。その結果、文明の進化に肉体的進化が適応できずに生じた不具合の一つが「腰痛」です。

5. 歩くことの重要性:腰痛予防と健康投資の最適解

椅子は短い時間腰掛ける分には「座り心地がいい椅子」の方がいいに決まってます。ですが、座り仕事のように長時間座る場合は害になるばかりです。腰痛を防ぐには、人類の体が長時間座るようにできておらず、二足歩行に最適化されていることを思い出し、最低1時間から2時間に一回は立ったり、用がなくても歩き回り、連続して座らないように習慣づける。そして仕事以外でも普段から歩くように習慣づける。それ以外にありません。
歩くことは腰への負担という「負債」を返済し、さらに老後への貯蓄型投資信託のような、いわば身体の「積立NISA」のようなものです。NISAよりも元手がかからず、ただ同然。おまけに景気にも左右されず、リスクも低く、歩行中の事故や転倒などの怪我や病気で倒れない限り、元本割れもしない。最もリスクが少なくリターンが多い投資の自己投資。老後に備えて投資をするなら、いつまでも座ってないで今すぐ立ち上がって歩こう。

藤田 和広

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