姿勢が引き起こす肩の不調とその対策

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50肩のような肩の痛み「インピンジメント症候群」の原因はデスクワークやスマホ!?

腕を挙げると肩が痛む、肩を動かすと音が鳴る――こうした症状は50肩と似ていますが、原因が異なります。50肩は関節包の炎症による痛みや可動域制限が特徴ですが、インピンジメント症候群は肩の腱や滑液包が肩峰と上腕骨の間で圧迫されることで起こります。

原因として加齢や使い過ぎがよく挙げられますが、実は猫背や巻き肩といった悪い姿勢が最大の要因です。これらの姿勢が鎖骨や肩甲骨の動きを妨げ、肩が圧迫されます。その結果、肩の動きが悪くなったり、痛みが生じます。

このブログでは、インピンジメント症候群の原因やメカニズムを詳しく解説するとともに、予防法や対処法についてもわかりやすく説明します。

現代の生活習慣が引き起こす猫背と巻き肩の影響

猫背や巻き肩は、長時間のパソコン作業やスマホ操作、うつぶせの状態でのスマホいじりや読書といった日常的な動作や姿勢が原因で、背中が丸まり胸や肩の筋肉が緊張し、肩甲骨が前に巻かれることで生じます。

このような姿勢が続くと、鎖骨の動きが妨げられ、肩甲骨の正常な動きが制限されます。その結果、肩の腱や滑液包(図1)と言われる潤滑油の入った袋が圧迫され、インピンジメント症候群が発生します。

図1滑液包

肩の運動に欠かせない鎖骨の働き

肩を動かす際に肩甲骨が正しい軌道に沿って動くことでスムーズに肩や腕を動かすことができます。その時に肩甲骨の軌道をナビゲートするシャフトドライブとして機能するのが鎖骨です。

例えば肩関節外転(腕を横に広げて頭上まで挙げる動作)において鎖骨は肩甲骨と連動して肩のスムーズな動作を助けています。鎖骨の運動がなければ、肩甲骨の回旋や肩関節の可動域は大きく制限されてしまいます。

肩関節外転運動での鎖骨の働き

肩関節外転運動の初期で、鎖骨は腕の動きに合わせて挙上(持ち上がる動き)し、腕が90度以上に達すると鎖骨は約5度から10度挙上して肩甲骨がスムーズに上方回旋(肩甲骨が外側と上方向に回転する動き図2)するためのスペースを作ります。

図2

この動きによって、肩峰下のスペースが広がり、腱や滑液包への圧迫を防ぐことができます。

肩を挙げる動作に欠かせない鎖骨の働き

肩関節外転運動が90度を超えると、腕が頭上に近づくにつれて、鎖骨は後方回旋(肩甲骨の回旋を助けるために鎖骨が後方に回る動き)を行います。この後方回旋は約20度から35度に及び、肩甲骨のさらなる回旋運動を助け、腕を頭上までスムーズに挙げることを可能にします。

これらの動きが正確に連動することで、肩関節の広い可動域が実現されているのです。

肩の動かしづらさや痛みにつながる鎖骨の問題

このように、鎖骨の挙上と回旋運動は肩甲骨の動きを補助し、肩関節外転だけでなく、あらゆる肩の運動に重要な働きをしています。鎖骨の運動が不十分であったり異常があったりすると、肩甲骨や肩関節に不具合が生じ、肩の可動域が制限されるだけでなく肩峰下スペースが狭まり、肩関節周囲の軟部組織にも負担がかかります。

図3ローテーターカフ

このスペースの狭窄によって最も影響を受けるのが、肩の回旋運動や挙上動作を支えるローテーターカフです。ローテーターカフ(図3)は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉から構成され、肩関節を安定させながらスムーズな動きを可能にします。中でも棘上筋は肩峰下スペースを通るため、鎖骨や肩甲骨の動きが悪くなると真っ先に圧迫され、摩擦が増えて腱の炎症や損傷が起こりやすくなります。

さらに、この状態が続くと炎症が慢性化し、腱の変性や部分断裂を引き起こし、肩の可動域をさらに狭めるだけでなく、日常生活にも影響を及ぼします。

インピンジメント症候群の予防法とそのやり方

「猫背」や「巻き肩」のような「悪い姿勢」によって、鎖骨の動きが妨げられることで肩峰下スペースが狭まり、インピンジメント症候群が生じます。それを防ぐ方法は、原因となる悪い姿勢にならないように気を付けること、鎖骨の運動を邪魔する筋肉をストレッチして緩めること、動きが悪くなった鎖骨を強制的に動かすこと。この三点です。以下にそのやり方を示します。

姿勢の改善

日ごろから座りっぱなしにならないようにデスクワーク中は最低90分ごとに立ち上がりましょう。

そして肩を軽く後ろに引いて、手を後ろに組んで腕を後ろに引きながら背筋を伸ばすストレッチや肩を前から後ろに回すように心がけましょう。

鎖骨の運動を邪魔する筋肉のストレッチ

やり方: ドア枠を使った「胸筋ストレッチ」

  • ドア枠の両側に手を置き、肘を肩と同じ高さにします。
  • 胸を張るように体を前方に移動し、胸や肩の前側が伸びるのを感じます。
  • 20~30秒キープし、1日3セット行います。

注意事項: 職場の通行の邪魔にならないように気を付けて励みましょう。

効果: 硬くなりやすい胸筋を緩め、肩甲骨の動きを助けます。

鎖骨を動かす体操・タオル回し体操

対象: 肩に痛みはないが肩を動かすとゴリゴリ音が鳴る人、肩が上げづらい人向けの体操

やり方:

  1. タオルを準備: タオルの両端を両手でしっかり握ります。
  2. スタートポジション: 肘を伸ばしたまま、タオルを体の前に持ち上げます。肩幅より少し広めに手を開くとやりやすいです。
  3. 前から後ろに回す: 肘を曲げずに、タオルを体の前から頭の上を通し、後ろまで動かします。ただし痛い場合はタオルの幅を広げても構いません。
  4. 後ろから前に戻す: 同じく肘を伸ばしたまま、後ろから頭の上を通って体の前に戻します。
  5. 回数: 前から後ろ、後ろから前を1セットとして、これを10セット繰り返します。

ポイント:

  • 肘を曲げないように意識しましょう。肘が曲がると、肩周りの正しい動きが得られにくくなります。
  • 無理にタオルを狭く握らず、つらい場合は幅を広げて行ってください。

痛くなったらすぐにやめ、患部を冷却してください。

鎖骨を動かす体操・鎖骨回し体操

対象: 既に肩が上がらず痛みもあってタオル回し体操ができない人。

  1. 肩鎖関節を圧迫する
    • 痛みのある肩の前方にある肩鎖関節を反対側の手のひらで押さえます。
    • 前から後ろに向けて、肩鎖関節をしっかり圧迫してください。
  2. 肩を後方に引く
    • 圧迫したまま、痛みのある肩をやや後ろに引きます。
  3. 肩を回す
    • 肩鎖関節への圧迫を続けたまま、肩を前から後ろに向かって大きく円を描くように動かします。
    • 肘を伸ばしたまま、胸を軽く張る姿勢を保ちながら行います。
  4. 回数
    • 前から後ろへの動きを5~10回繰り返します。
    • この動作を1日数回、無理のない範囲で行ってください。

注意点:

  • 痛みが強くなる場合はすぐに中止し、患部を冷却してください。
  • 無理せず、徐々に動きを広げることを意識しましょう。

詳しく知りたい方は動画で説明していますので、下のリンクをクリックしてください。

YouTube Video

鎖骨を動かす体操・鎖骨回し体操

YouTube 動画に飛びます。肩の動きを改善するための体操をチェック!

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