症例:マウス操作で痛み出す右の肩や肘・手首。

患者さん情報と症状について。

患者さん情報:

40代・女性。職業はパソコン操作が多い事務職。

症状の経緯:

3ヶ月前から仕事でマウス操作をしていると、数十分で右腕の付け根(右の肩鎖関節)や肘の外側や手首の親指側が重だるくなる。図1

1ヶ月前ぐらい前から上記のダルさが痛みに変わり、その他に上のものを取ろうとした時など、右手を肩より上にあげようとすると、肩の付け根から「ボキボキ」音がして挙げずらく、右腕の付け根の後ろ側が(三角筋後部)(図1)突っ張って痛む。

図1

時期を同じくして、頻繁に寝違えるようになり、朝起きると首が痛い。

2−3日前から夕方ごろになると右手のひら側が痺れてジンジンする事もある。

2ヶ月前に整形外科を受診し、右肩と首をレントゲン撮影したが画像上に問題はなく、湿布と痛み止めを処方される。

その後、1ヶ月ほど整骨院で右肩に電気を当て右腕をマッサージで解してもらったが、なかなか改善しないので通うのをやめる。

右肩が挙げずらくなったので40肩かと思いネットで40肩を調べていたら、当院のブログ記事「SEやプログラマーなどPC作業の人に多い50肩の原因。」を見つけ、内容が自分の症状に似ていたので来院。

症状の原因:肘をついたマウス操作。

この方の姿勢を観察すると、

右肩が上に上がり、肩が前に出た巻き肩。

このような姿勢は、右肘をついてマウスを操作している人に見られる典型的な姿勢です。患者さんに仕事中の姿勢を確認すると右肘をついてマウスやキーボードを操作していることがわかりました。

そしてこの方の右肩や腕に関わる諸々の痛みや痺れは、肘をついた状態で長時間マウスを操作やキー入力をしたことが原因で生じた症状です。

肘をついて長時間マウスなどを操作すると以下のような不具合がより生じます。

  1. 肩関節が圧迫され鎖骨の動きが極端に悪くなる。
  2. 腕・肘・手首を曲げる筋肉が強く張る。
  3. 掌のこわばりや圧迫で血流が悪くなる。

1.肩関節が圧迫され鎖骨の動きが極端に悪くなる。

右肘をつくと上半身の体重が右の肩関節に加わり、圧迫されます。

肩関節は肩甲骨と上腕骨からなる肩甲上腕関節と肩甲骨と鎖骨からなる肩鎖関節、鎖骨と胸骨からなる胸鎖関節で構成されています。図2

図2

これらの関節の中で鎖骨と関節する肩鎖関節と胸鎖関節は圧迫に対して非常に弱く、長く圧迫されると鎖骨の動きが悪くなります。

鎖骨は上腕骨の運動に応じて肩甲骨の動きを誘導する働きがあり、鎖骨の動きが悪くなることで肩甲骨の動きが制限され、結果的に上腕骨と肩甲骨の動きが制限されます。

横から真上に向かって腕を挙げる「外転」運動は鎖骨による肩甲骨の誘導が重要になるなるので、鎖骨の運動が制限されると肩が挙げ辛くなります。

肩関節の外転運動が制限されている状態で無理に動かすと、肩関節外転筋である三角筋の負担が増え、結果的に張りや痛みが生じます。

2.腕・肘・手首を曲げる筋肉が強く張る。

肘をついた姿勢は、右腕を曲げた状態で体を支えるので、腕・肘・手首を曲げる筋肉が主に緊張します。

この状態が長期化すると上腕を曲げる烏口腕筋や前腕を曲げる上腕筋(図3)、肘を曲げる腕橈骨筋や手首を曲げる橈側手根屈筋(図4)、さらに親指を曲げる長・短母指外転筋(図4)に疲労が蓄積してダル重くなり、痛みを発します。

図3
図4

さらに、これらの筋肉の緊張が、腕・肘・手首の伸展や上腕の外転運動を邪魔し、これらの運動が制限されます。

3.掌のこわばりや圧迫で血流が悪くなる。

肘をついて体を支えることで、体を安定させるために必要以上にマウスを強く握ぎるようになり、特に親指を曲げる筋肉が強く緊張してこわばりや痛みが生じます。

さらに、親指や掌が圧迫されることで、血流が悪くなり、掌に痺れが生じます。

以上のように肘をついて長時間マウスを操作していたことが原因で、右腕の筋肉が張って痛みを発し、四十肩のように右肩が挙げ辛くなり、さらに神経痛のような痺れが生じました。

当院の施術。

圧迫により鎖骨がズレて動きが悪くなった右の胸鎖関節と肩鎖関節を矯正し、鎖骨に動きをつけた。

緊張して固くこわばっている腕・肘・手首・親指を曲げる筋肉をストレッチで緩め、自宅で出来るストレッチ法を指導しました。

背骨(胸椎)と肋骨から構成されている胸郭は、肩甲骨の土台として機能し、肩関節の運動に影響します。

猫背や側弯などの悪い姿勢のせいで、胸椎がズレて胸郭が歪むと、肩甲骨の動きが悪くなり、結果的に肩の動きそのものが悪くなるので、胸郭の歪みを取るためにズレた胸椎を矯正した。

鎖骨に動きをつけ、強く張っている筋肉を解し、背骨の歪みを矯正することで、右の首から肩、肘、手首に至る筋肉の張りや痛みは、ほぼ改善されました。

右肩の外転運動では、右三角筋後部繊維の張りが若干残るが、鎖骨が正常に動くようになり、来院時よりも格段に挙げやすくなった。

施術後はどこでもできる簡単なストレッチを指導し、肘はつかないように注意した。

初回から1週間後、2度目の来院では右肩の痛みはほとんどなく、外転運動時に生じていた三角筋後部繊維の張りも気にならない程度まで改善していた。

施術は患部よりも体の歪みを取ることを重視し、骨盤と背骨を矯正し、姿勢に気をつけることを条件に施術を終了。

2回の施術で2週間で終了。

院長からのコメント。

肩を動かす時に鎖骨はわずかしか動きませんが、鎖骨は肩甲骨にとってレールのような働きをするので、鎖骨の動きが悪くなると極端に肩の可動域が狭くなったり、運動の滑らかさが失われます。

特に肘をつくと真っ先に関節が圧迫され、動きが悪くなるので、肘をついてPC操作をしたり、肘に寄っかかって座るのはやめましょう。

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